「歯科技工士になるにはどうしたら良いの?」
「歯科技工士の国家試験って難しい?」
「歯科技工士ってどんな仕事をするの?」
歯科技工士は医療従事者でありながら、彫刻やデザインを伴うとてもクリエイティブな面も持ち、国家資格が必要な職業です。よく「食べることは生きること」と言われますが、食事をするためには「歯」がとても大切ですよね。歯科技工士は人々の健康と命を支える重要な役割を担っているのです。
この記事では、歯科技工士の仕事内容や年収、国家試験の内容、難易度、合格率、メリットなどを解説しています。歯科技工士を目指そうか悩んでいる人や、歯科技工士になるにあたって不安な点がある人は、ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
歯科技工士の仕事内容は幅広い
歯科技工士は、歯科医師の指示書に従って、入れ歯や被せ物、詰め物、矯正装置などの作成・加工・修理を行う専門家です。国家資格の一つであることや独占業務であること、場所や年齢問わず働けることから、人気の高い職業でもあります。
作成するものによって素材や作成工程も異なり、また、1つの模型を作成するのにもかなりの時間を要すため、一人前になるまで早くても5年、一般的には10年の年月がかかるとも言われています。スキルや知識だけでなく、あきらめない精神力も求められるでしょう。
歯科技工士の働き方には、次のようなケースがあります。
- 歯科技工所
- 歯科医院
- 病院内の歯科技工室
- 歯科関連企業
- 海外
- 独立開業
1つずつ解説していきます。
歯科技工所で働く
歯科技工所は歯科技工士の就職先として最も多く、歯科技工士としての業務に集中できる環境です。病院や歯科医院から依頼を受け、作成〜納品までを担当し、大抵は他のスタッフとチームを組んで作業を進めていきます。「デンタルラボ」「ラボ」と呼ばれることも多いです。
実力主義・職人気質のある仕事ということもあり厳しいと感じる人も多いようですが、医師からの信頼を得るためにはスキルありきだと言えるでしょう。特に、将来独立開業を目指しているのであれば、厳しい環境の中でスキルを磨けるのはありがたいことかもしれません。とは言え全ての歯科技工所が厳しい環境ではなく、他業種の企業と同様に歯科技工所それぞれで社風や業務内容は異なります。「長く勤めたい」「人間関係で悩みたくない」という人は、就職前のリサーチの徹底や職場見学をおすすめします。
歯科医院で働く
独自で歯科技工士を抱えている歯科医院もあります。傾向としてはインプラントや矯正、審美歯科といった専門分野に特化した歯科医院が多く、歯科技工所と比較して勤務時間が短く、専門スキルを磨くことができます。審美歯科に重きを置いた歯科医院では、美的センスも求められるでしょう。
歯科技工士が歯科医院で働く大きな特徴として、直接患者さんの口腔内を観察できる点があげられます。調整や修正が必要かどうかを自身で判断でき、歯科医師と直接コミュニケーションを取ることもできます。作業するものがない時は歯科助手として診察のサポートに入ることもあるため、広く歯科を学びたい人にも向いています。
病院内の歯科技工室で働く
歯科がある総合病院には、歯科技工室が設置されています。歯科医院では扱わないような特殊な処置を要する患者さんの比率が多く、歯だけでなく、口腔全体や顎など、取り扱う範囲が広いといった特徴があります。幅広い症例を扱える環境のため、また、チーム医療の一員として患者さんと向き合えるため、歯科技工士としてのステップアップやキャリアアップを目指したい人に適しているでしょう。
歯科技工士としての実務のほか、特殊な症例に対する研究や学会発表するチャンスもあります。
歯科関連企業で働く
歯科に関する商品メーカーへ就職し、機材の開発や材料の研究に携わるという道もあります。研究開発だけでなく、展示会や取引先での商品PRのためにインストラクターとしての活躍するなど、歯科技工士の資格を活かして様々な経験ができるでしょう。
歯科技工士としての技術力を磨きたい人には不向きな環境ですが、歯科技工士としての経験を医療現場以外で発揮したい人にピッタリな環境です。
海外の歯科医院で働く
海外にももちろん歯科技工士という職業はありますが、国家資格でない国もあるため、国家資格として一定のスキルと知識をクリアした日本の歯科技工士は世界に通用する技術と言われています。技術職としての最大のメリットは、言葉の壁を超えて成果物が評価される点です。確かなスキルがあれば、日本全国どころか世界でも活躍できると言えるでしょう。
就職先は日本人医師が運営している歯科医院が多く、患者さんも現地に在住している日本人が多いため、慣れ親しんだ日本人の歯からスタートできる安心感があります。もちろんいきなり現地の歯科医院に勤めるという道もあり、人種を超えたスキルを身につけることができます。
独立開業する
歯科技工士は開業権を要する資格のため、歯科技工所や自宅での開業が可能です。自宅開業の場合は賃貸の契約や周囲への騒音などを考慮しなければなりませんが、持ち家や自宅兼事務所使用可の賃貸であれば歯科技工所用施設を賃貸・購入しなくても良いため、経費を抑えられるというメリットがあります。また、これまでの人脈や信頼経験から歯科医院や歯科技工所などの一部を間借りして開業できるケースもあります。
独立開業は毎月決まった給与が入らない不安定さと引き換えに、収入の上限がないという点が最大の特徴です。安定した受注量があれば従業員を雇って若手の育成に尽力するという未来もありますし、自らがセミナーや研修などを開催してサービスを提供すれば受注量に左右されずに収入を上げていくこともできるでしょう。
歯科技工士の年収は約426万円
歯科技工士の平均年収は約426万円です。月の給与額は約32万円で、年間賞与は約42万とされています。同じ医療系の国家資格の中ではやや低いものの、スキルや実績、人脈、経営力などがあればこの額にとどまることなく、さらに上を目指すことができます。
歯科技工士の受験資格と国家試験の内容
次に、歯科技工士になるための国家試験の内容と、国家試験を受けるための受験資格について解説します。
歯科技工士国家試験の受験資格
歯科技工士の受験資格は、歯科技工士教育機関で2年以上学び、所定の知識と技術を習得することで得られます。歯科技工士の教育機関は2〜3年制の専門学校や短期大学、4年制大学もあります。
夜間の専門学校もあり、働きながら歯科技工士を目指す社会人や主婦にも人気です。授業時間も17時〜21時頃の中で3時間程度ですので日中の仕事に大きく影響することもなく、3年程度で卒業・資格取得を目指せます。
歯科技工士国家試験の試験内容
歯科技工士国家試験は1年で2回実施され、試験開催地は北海道・宮城県・東京都・大阪府・福岡県の5都道府県に限定されています。内容としては学科試験と実地試験の2種類あり、それぞれで合格点を取らなければなりません。
学科試験は歯科技工士に必要な8つの科目が出題され、すべて必須科目となっています。回答方法は4肢選択のマークシート方式ですので、試験前に慣れておきましょう。
- 歯科理工学
- 歯の解剖学
- 顎口腔機能学
- 有床義歯技工学
- 歯冠修復技工学
- 矯正歯科技工学
- 小児歯科技工学
- 関係法規
学科試験の合格基準は、1問1点で80点中48点以上の得点かつ各科目30%以上です。得意分野で得点を稼いでも、30%未満の科目があれば不合格となります。
実地試験とは実技試験のことで、複数の課題が与えられます。内容は地域や年度によって変わります。
- 歯型彫刻
- 全部床義歯の人工歯配列
- ワイヤー屈曲
- デッサン
- 歯冠修復物のワックス形成など
実地試験の合格基準は、1課題30点満点でトータル90点中54点以上です。
学科試験と実地試験の両方で合格基準を満たせば、晴れて歯科技工士となれます。
歯科技工士国家試験の合格率と難易度
歯科技工士国家試験の内容を理解したところで、合格率と難易度を見ていきましょう。
歯科技工士国家試験の合格率は95%前後
令和2年度歯科技工士国家試験の合格者は受験者数859名中合格者823名で、合格率は95.8%でした。過去の合格率を見ても、毎回95%前後となっています。
- 令和元年度 95.0%
(受験者数882名/合格者数838名) - 平成30年度 95.1%
(受験者数839名/合格者数798名) - 平成29年度 94.7%
(受験者数952名/合格者数902名)
合格者が多い理由の一つとして、足切り点数がないことが挙げられるでしょう。合格基準を満たせば合格できるため、同じ学校の仲間同士でライバル意識がなく、みんなで合格を目指そうというモチベーションにもつながります。
歯科技工士国家試験の難易度は勉強次第
例年95%前後と高い合格率が出ている歯科技工士国家試験ですが、だからと言って簡単というわけではありません。合格するためには、授業や実習をしっかり受け、国家試験前の最終学年では1日2時間程度の勉強が必要とされています。
実技試験に関しては、練習あるのみです。歯科技工士になったあとでも技工作品のコンテストが開催されるほど、歯型彫刻のスキルは歯科技工士にとって大切な要素なのです。まずは歯科技工士としてのスタートラインに立てるよう、基本をしっかり習得していきましょう。
歯科技工士になるメリットは安定性と柔軟性
歯科技工士の資格取得には、生きていく上で次のようなメリットがあります。
- 社会的信用がある
- 全国どこでも仕事ができる
- 生涯スキルアップできる
- 年齢・性別問わず活躍できる
- 幅広いキャリアアップ方法がある
詳しく解説していきます。
社会的信用がある
歯科技工士は国家資格ですので、社会的な信頼性や信用性が高いです。金融機関によっては国家資格があること自体を評価してくれるところもあり、例え勤続年数が短くても、あるいは転職回数が多くてもローン審査に通ることがあります。
全国どこでも仕事ができる
歯科技工士は独占業務ですので、全国どこでも仕事ができます。歯科技工士は高齢化が進んでおり、有効求人倍率は今後上昇していくでしょう。先ほどもご紹介したように、日本の歯科技工士スキルは海外でも通用しますので、日本に限らず海外でも活躍できます。
生涯スキルアップできる
歯科技工士には、日本歯科技工士会主催・厚生労働省後援の生涯研修制度があります。医療業界初となる試みで、毎年200もの講座が全国各地で開催されています。内容は歯科技工士の専門技術だけでなく、関連法令や経営管理などの知識も学べます。歯科技工士になった後も学ぶ機会があるのは、独立後や若手に育成にまわった時の強い味方になるでしょう。
年齢・性別問わず活躍できる
歯科技工士は力仕事がなく、座って作業することの多い仕事です。年齢や男女による差が少なく、生涯通して仕事ができる職業です。また、妊娠や子育てといったライフステージの変化があってもブランク復帰しやすく、歯科医院や歯科技工所などではアルバイト・パート採用もありますので、育児や介護などの家庭の都合に合わせて働くことができるでしょう。時給も一般的なパートよりは高く、1,000〜2,000円程度が一般的です。
幅広いキャリアアップ方法がある
歯科技工士は活躍できる場が幅広いので、キャリアップ方法もたくさんあります。歯科技工士業界では自費診療が花形と言われていますので、技術をつけて保険から自費へのステップアップを考えたり、より専門性を高めるために歯科医院内で専属歯科技工士になったり、経営に興味がある人は独立開業するというルートも目指せます。
【まとめ】歯科技工士は生涯職人でいられる仕事
歯科技工士という職業は人がいる限りなくなりません。歯科技工士全体での高齢化が進んでいることから、今後まずます需要も高くなっていくことでしょう。スキルアップやキャリアアップチャンスもあり、生涯を通してスキルを研磨していける点や、ライフスタイルに合わせて独立開業やパート・アルバイトといった働き方ができる点も魅力ですね。
なにより、歯科技工士は人が生きていくために欠かせない「食事」を支えるという多大な社会貢献ができます。美しく整った歯は、人の心まで元気にさせてくれるものですし、昨今多発している様々な災害現場でも、歯科技工士は大事な役割を担っています。
国家試験ですので強い覚悟と努力は欠かせませんが、医療関係の国家資格の中では資格取得の難易度が高すぎるということもないでしょう。
投稿者プロフィール
- 新卒入社した企業で大失敗!入社1ヶ月で退職し、某大手通信会社のグループ企業へ転職。結婚を機にフリーランスになり、個人事業主6年目。「就職失敗→転職→独立→結婚・出産→ワーママ」という経験を活かして、現在は採用メディアや金融メディアでライターをしています。3級FP技能士保有。趣味は投資の勉強と旅行です♪