患者の心身のケアや医師の診療、治療介助を行う看護師。医療の最前線で活躍している看護師を志している方も多いのではないでしょうか。この記事では、看護師になるために必要な資格や国家資格の合格率、年収、具体的な仕事内容に至るまで看護師について徹底解説した内容をお伝えします。
以下の記事は同じ医療系の職業について解説しています。合わせてご覧ください。
もくじ
看護師の役割は健康に問題を抱えている人を支えること
看護師は、主に療養上のお世話や医師の診療補助を行い、傷病者や妊産婦、高齢者など健康にさまざまな問題を抱えている人々を支える仕事です。看護師の役割は、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い世代の方に寄り添い、病いや老いなどによって心身が衰えても、その人らしく生活ができるようにケアすることです。
患者自身の医療的なケアはもちろんですが、患者の家族に対する精神的なケアも看護師の仕事に含まれています。
近年では、長寿化や少子高齢化を背景に看護師の活躍の場は病院から在宅や施設へと移行している傾向が見られます。2015年に行われた国勢調査によると、看護師の就業者数は全国で約130万人でした。就業者数の93.3%が女性、6.7%が男性となっています。
看護師と准看護師の違い
皆さんは「准看護師」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。実は、看護師にも種類があるのです。准看護師とは、看護師不足を補うために誕生した資格で、看護師が厚生労働大臣の免許(国家資格)なのに対して、准看護師は都道府県知事の免許になります。資格取得のハードルが低いことが准看護師の特徴です。
看護師と准看護師では、実施できる業務の範囲に違いはありません。しかし、准看護師が業務を行うには医師や歯科医師、看護師の指示が必要となり、看護師のように自らの判断で常務を行うことができないのです。
看護師と准看護師という種類があること、そしてどのような違いがあるのかをしっかり把握するようにしましょう。
看護師になるには資格が必要
看護師として働くためには、看護師免許が必要となります。看護師免許を取るためには、看護師国家試験に合格しなければなりません。そして、看護師国家試験はただ受験するだけではなく、所定の専門教育を終了することが必要です。
看護師国家試験を受験する方法は、以下の3つです。
- 高校卒業後、看護大学や看護短期大学・看護専門学校で4年もしくは3年の専門課程を修了する
- 中学卒業後、5年一貫の看護師養成課程のある高校で専門課程を修了する
- 准看護師資格取得後に看護短期大学・看護専門学校で2年の専門課程を修了する
最も一般的な方法は、高校卒業後に看護師養成課程のある大学や短大、専門学校に入学する方法です。必ずしも新卒でなければならないなどはありませんので、一度社会人として勤務してから看護師を目指す方もいらっしゃいます。
看護師免許を取得し、さらに1年以上の専門課程を修了することで保健師や助産師の国家試験を受験することができます。保健師や助産師のカリキュラムのある大学に進学し、所定の単位を修めている場合はこの限りではありません。
看護師の仕事内容
看護師の仕事内容を詳しく知らない方も多いと思いますので、ここで看護師がどのような仕事内容をこなしているのか解説していきます。勤務先や配属されている場所によって、仕事内容は異なりますが看護師は以下の項目を行なっています。
- 注射
- 点滴
- 創傷処置
- 検体採取
- 状態観察
- バイタルチェック
- 外来患者の問診や誘導
- 検査の説明と検査結果の確認
- カルテの記録と整理
- カンファレンス
- 勤務交代時の申し送り
- ナースコールの対応
- 巡回
- 入院患者の看護計画の立案
- 入院時オリエンテーション
- 車椅子やストレッチャーを使った移乗と移送
- 食事と入浴・排泄の介助
- ベッドメイキング
- 体位変換
- 健康相談など
看護師の勤務先
看護師は病院やクリニックで働いているイメージが強いですが、近年は訪問看護や高齢者向け施設で働く看護師も増えてきています。勤務先が異なるだけで、仕事内容も大きく変わってきます。次に勤務先による仕事内容の違いについて見てみましょう。
病院
病院は法律上で「病床数20床以上の医療機関」と定義されていますが、一般的には複数の診療科目を持った、入院設備のある中規模以上の医療機関を指します。看護師となると通常このような総合病院からキャリアをスタートさせることが多いです。診療科目や配属先によって、仕事内容は異なりますが臨床で求められる基本的な看護技術を身につけることができます。
効率よく診療を進める力量が試される外来。療養生活の不安を医療的、精神的に支える病棟、手術のスムーズな進行をサポートする手術室など、配属先によって求められる役割や適性が異なります。夜勤のない日勤のみとなる透析室、内視鏡室、健診・人間ドックはワークライフバランスを重視したい方に人気です。
クリニック
一方のクリニックは法律上「病床数19床以下の医療機関」と定義されています。実際には入院設備のない無床診療所が9割を超えており、一般的には特定の診療科目を持つ、入院設備のない小規模な医療機関を指しています。クリニックで働く看護師の主な仕事内容は、医師の診療補助となります。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションで働く看護師の仕事内容は、利用者の自宅を直接訪問し、主治医の指示書に従い医療処理やケアを行うことです。
具体的にはバイタルチェックや服薬管理、点滴、血糖値の測定、インスリン注射、カテーテルの交換、人工呼吸器のチェックなどを行います。必要に応じて歩行訓練などを実施することもあるようです。
訪問介護ステーションでは、基本的に夜勤がなく日勤のみ。固定で週休2日の事業所が多いため、病院で働く場合と比べると自分のペースで働くことができると言えるでしょう。
高齢者向け施設
高齢者向け施設で働く看護師の仕事内容は、利用者の健康管理や施設職員に対する健康指導です。
バイタルチェック、服薬管理、簡単な医療処置に加えて、緊急時には医師を呼ぶかどうかの判断も求められます。一言で高齢者施設と言ってもデイサービスや有料老人ホーム。特養、老健など、施設によって利用者の介護度はさまざまです。高齢者向け施設で働く看護師に求められる役割や夜間対応の体制(夜勤、オンコール、電話対応のみなど)も異なりますので、就職を希望する場合は、施設の特徴や仕事内容をよく確認するようにしましょう。
保育施設
保育園で働く看護師の仕事内容は、園児の健康管理や集団感染の予防、園児の家族に対する健康指導です。
乳幼児は大人に比べて抵抗力が弱く、マスクの着用など基本的な感染対策を十分に行うことができません。そのため、保育園は感染症やウイルス性疾患が流行しやすい環境にあります。看護師は、感染を防ぐために保険頼りや手洗い指導などを行い、子供、家族、保育士の3方向から対策を行います。
また、1施設につき看護師1名まで「保育士」とみなすことができるため、保育園によっては保育業務または保育補助業務に携わることもあるようです。
看護師国家試験の概要
看護師になるために避けては通れない看護師国家試験。看護師国家試験は、受験資格を有している人を対象としており、看護師として勤務を行う上で必要な技術や知識を備えているか図るために毎年2月に行われます。
国家資格と聞くと、かなりハードルが高いように思えますが、実際の試験は「看護師として必要最低限の基礎知識」を問う問題が中心となっています。そのため、適切な対策を行い合格基準を満たしていれば国家資格を取得することができるのです。
看護師国家試験で出題される試験科目
試験は必修問題50問、一般問題は130問、状況設定問題が60問が午前と午後に分かれて出題されます。制限時間はそれぞれ160分です。試験科目は以下の10科目となっています。
- 人体の構造と機能
- 健康支援と社会保障制度
- 成人看護学
- 小児看護学
- 精神看護学
- 疾病の成り立ちと回復の促進
- 基礎看護学
- 老年看護学
- 母性看護学
- 在宅看護論及び看護の総合と実践
看護師国家試験の受験費用
看護師国家試験を受験するためには、手数料として5,400円がかかります。手数料の額に相当する収入印紙を受験願書に貼って納付を行います。収入印紙とは、国の手数料や租税の支払いなどに利用される証票のことです。
一般的には郵便局で購入することができます。受験に関する書類を受理した後は、受験手数料は返還されません。
看護師国家試験の合格率は約90%
気になる看護師国家試験の合格率ですが、2021年3月26日に厚生労働省が行った看護師国家試験の合格発表での合格率は90.4%でした。第110回看護師国家試験は出願者数6万6,778人、受験者数6万6,124人、合格者数5万9,769人で合格率は90.4%。このうち、新卒者の合格者数は5万6,868人でした。
看護師の国家試験は、受験者をふるいにかけて落とすのことが目的ではなく現場で職務を遂行するために十分な知識を持っているかチェックするものです。国家試験の受験までに、大学や専門学校で数年に渡って学んできたことを復習することで看護師国家試験を難なく合格することができます。
看護師の年収は手取りで360万円
看護師は年収が高いというイメージがありますが、厚生労働省の調査によると看護師の平均年収は491万8,300円(平均年齢41.2歳)となっています。ただし、これは年間のボーナスや夜勤手当て、残業代、勤務手当などの各種手当も含んだ金額となっています。
さらに、この金額は手取り額ではなく所得税や社会保険料などが引かれる前、額面の金額です。額面の75〜80%が手取り額となるので看護師の手取りは平均で360〜390万円、ボーナスを除いた手取り月収は平均25〜27万円程度になると考えられます。
看護師の給料の内訳
看護師の給料の内訳ですが、以下の4つが主になっています。
- 基本給
- 夜勤手当
- 残業代(時間外手当)
- ボーナス
この他に通勤手当や家族手当、住居手当などの手当が付く場合があります。
①看護師の基本給
日本看護協会の調査によると、新卒看護師の基本給は約20万円、10年目で非管理職の看護師の基本給は約24万円となっています。
基本給は年齢や経験年数、役職の有無などによって多少異なりますが看護師の基本給は約20万円からスタートし、年4,000〜5,000円ずつ昇給、10年目で約25万円前後となるのが一般的でしょう。
②看護師の夜勤手当
看護師の年収には夜勤手当がかなりのウェイトを占めています。2交代や3交代、夜勤の回数によって手当の金額は異なります。しかし、看護師は毎月の給料のうち平均3.5〜5万円を夜勤で稼いでいる方が多いようです。
これを年間で計算すると平均年収492万円のうち、40〜60万円は夜勤手当になります。夜勤は負担が大きい業務内容ですが、これだけ負担が大きい仕事をこなしているからこそ高い給料を得ることができる職業だと言えます。
③看護師の残業代
一般企業では、残業代が減ると給料がガクンと落ちる場合もあるかもしれません。しかし、看護師の場合は残業代が収入に占める割合はあまり多くありません。
ちなみに、看護師の1ヶ月あたりの残業時間は、厚生労働省の調査では平均6時間となっています。
④看護師のボーナス
厚生労働省の調査によると、看護師の年間ボーナス額は平均で85万円7,500円となっています。基本給と同じように、年齢や役職によって、ボーナスの金額は異なります。しかし、看護師のボーナスは年間40万円台からスタートし。40代後半〜50代で100万円前後に達する場合が多いようです。
【まとめ】看護師は大変だがやりがいのある仕事
命に関わる医療の最前線で活躍する看護師。看護師となるためには、国家資格を取得しなければなりませんが、国家試験の合格率は高く事前にしっかりと試験対策を取っていれば難なくパスすることができるようです。
看護師は高い年収を誇っていますが、夜勤があったり仕事内容は職場によって異なり、場合によっては体力的に疲弊してしまうこともあるようです。しかし、患者さんやその家族に感謝されやりがいを感じることができる職業だと言えるのではないでしょうか。
投稿者プロフィール
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